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デシズム!

とある職人の弟子がぼやいてます

腕を磨く

職人は腕を磨かなくてはいけない。なぜなら、その腕の良し悪しで食えるか食えないかが決まるからだ。

 

しかし、お師匠さんは腕の磨き方は教えてくれない。当然だ。磨き方を教えられたら、磨き方ばかりに目がいき、肝心の腕の方がおろそかになる。

 

お師匠さんは磨かれた腕を見せてくれる。ピッカピカの腕を見せつける。弟子はその輝きを見たあと、自分の腕を見ることになる。古い十円玉のようにくすんでいる。

 

どうやって磨けば腕は輝くのか。どれだけ磨けば輝くのか。少し考えてみるが、結局、よくわからない。自分の腕のことなのにはっきりしない。

 

だから試行錯誤する。考えつつも、行動してみる。行動の前後で何か変わったか、どんな小さなことも見逃さないようにまじまじと見つける。

 

何も反射することのなかった自分の腕に、ぼんやりと何かの輪郭が写り込んでいることがあるかもしれない。この調子で磨けば、鏡のようにはっきりと見えるようになるだろうか。そんなことを思いながら、また磨き始める。

 

だが、うまく磨けないこともある。腕は複雑だからだ。腕には、指があり、爪があり、手首があり、肘がある。関節もある。それぞれで磨き方が違う。人差し指がうまく磨けるようになったからと言って、中指もうまく磨けるとは限らない。

 

しかし、人差し指と中指がうまく磨けるようになれば、薬指の磨き方にある程度見当がつけられる。己で試行錯誤を繰り返した分だけ、その勘は鋭くなっている。

 

輝き具合をしっかりと見つめつつ毎日丁寧に自分の腕を磨く。